湯井亮さん

令和時代に入り、片山工房も人が軸を基本として、

「絵」を描かれる方々のご紹介を進めていく事となりました。

描かれた「絵」がどのように存在して、どのように意味するのか、

人それぞれ形は違えども「描きたい絵」を

40名のメンバーの方々が毎日創造し増え続けている

「作品」を年間と通して感じて頂ければ幸いです。

片山工房 理事長 新川修平

 

 

 

 

湯井亮さん

 

ニコニコとトミカのミニカーを大事に机の上に並べ、

時には手に持ち、あらゆる角度から眺め、走らせている。
車の渋滞も全く苦にならない。

なぜなら車をじっくり見ることができるから。

 


片山工房に来られて間もない頃は、車だけを描かれていた。

その頃スタッフが亮さんの隣で、

できあがった作品を見せてもらおうとすると、さっと隠された。

そしてまた、新しい絵を黙々と描きに片山工房に来られ続けた。

 

亮さんが見ておられる車の雑誌を、少し見てもいいですか?

とたずねると、

多分しぶしぶであったと思うが…見せて下さった。

そんな関わりが続いた。

 

 

しばらくして車体下に影ができ、

タイヤのホイールの細部が精密になり、

車体をオリジナルの色に塗ってみるなど、

日をおうごとに絵が変化していった。

 

 

そしてある時、家族旅行で訪れた街の風景の中に車が走る絵が生まれた。
使用している画材も変化が見られるようになった。

基本は鉛筆で下書きをした後、アルコールマーカーで彩色していくが、

そこへ色鉛筆も併用するようになった。

 

 

 

下準備や仕上げに色鉛筆を使うことで、

マーカーだけでは出せなかった色の幅が出てきた。

車の重量感や質感はますます独自の色合いを持って描きだし、

画面の隅々まで描きたい思いが強くなって来られ、

背景には亮さんが日々感じておられることが、空の色や街の風景にも現れるようになり、

今では架空の世界の中に車を置き、様々な創意工夫を画面に余すとこなく描き込んでいる。

 

 

 

 

片山工房ではスタッフが指導していない。

 

しかし、日々亮さんが安心して描ける場を整え続けることで、

亮さんが本来持っておられる力をこちらも気づき、

これまでの展開になっていったように思う。

 

 

最近では「これ、地獄世界!闇の世界!」と地獄世界にある車のシリーズを描き、

 

 

 

 

笑顔でスタッフに何度も見せてくださる。

 

 

どうして地獄を描こうと閃いたのかは亮さんのみぞ知る…

 

けれども完成した作品を生き生きとスタッフに伝えてくださる姿が

 

 

 

いま、ここにある。

 

 

 

(文責 久保遥)