松浦愛夢さん

 

10年以上、片山工房で描き続けている。

興味関心のあることを調べる時間、好きなものを見てゆっくりする時間、

いつか描いてみたいものを集める時間・・・

そうした中に創作をする時間という自らのリズムが淡々と流れる。

 

 

 

 

 

 

幼い頃から絵を描くことが好きであり、下描きなしで絵筆を運んでいく。

花、生き物、お祭り、キャラクターなど、ありとあらゆるものに好奇心を持ち、

モチーフにしている。身近な人たちの似顔絵を描かれることもあり、

人との関わりを楽しんでおられる一面や、

自分自身がオリンピックの聖火に扮する自画像を描く大胆さとユーモアも持つ。

 

 

愛夢さんの創作活動では、スタッフは本人が指示される方向に紙やキャンバスを少しずつ動かし、

「ここ」と言われたところで留める。

和紙や画用紙に絵の具で描かれる時は、色を塗られた部分をドライヤーで乾かし、

指示された方向に紙をずらし、また塗られ、乾かす。

 

 

 

 

作品の背景には、愛夢さん自らが用意された色見本帳から、モチーフを引き立たせる色を選び抜く。

その色の調合を本人と話し合って行うなど、スタッフは寄り添う。

 

日常のリズムを大切にし、継続できる環境を整えることに集中している。

そうすることで、愛夢さんの強みである、面白いことや、

人や自分が好きであることが変わらず、絵を描くことが長く続くのではないかと思う。

 

 
 
 
「兵庫県知事賞に輝いた作品。ケールを題材にした、「野菜が一杯」」

 

昨年、80号のキャンバスに一年以上をかけて野菜のケールを描かれた。

制作前に愛夢さん自身でケールの写真以外に水の入ったグラスや、

バルタン星人の手の形を資料として収集された。

この資料たちは一体何なのか。

スタッフ一同不思議に思っていると、

愛夢さんはケールについて調べていく中で青汁に使われていることを知り、

さらに、ケールの形をデフォルメしていくとバルタン星人の手の形に見えたようで、

それぞれの資料を指差し、肩を震わし笑っておられた。

 

見た資料をそのまま描いておられるのかと思っていたが、

描き始めるまでに想像を膨らませ、物語を紡ぐ時間を豊かに育んでおられる。

ケールはそのような遊び心で満ち溢れている。

 

 

好奇心のままに。わくわくすること、面白いと感じたこと。

 

 

それらがそのまま、大胆な色と構図で見る人を惹きつける「愛夢さんの作品」となり、場を明るく照らす。

 

 

大きなキャンバスに向かって描く姿が、今日も続いている。

 

 

 

 (文責 久保遥)