木村篤志さん

ヘッドホンからはデスメタルやハードロックなどが流れる。

時折「これ、これや!」と心を揺さぶられている。

そんな中、手は描きたいイメージに合う画材を探し、下描きなしに

様々なアニメやドラマなどからインスパイアされた

世界観を画用紙の上に流し込んでいく。

 

主に愛用している画材は

水性顔料インクのサインペン、ポスカである。

 

ポスカはそのまま使うと不透明で

均一に色を塗ることができるが、水を含ませることで

水彩絵の具のようになる。

篤志さんはパレットなどにポスカのインクをだし、そこに

水を加え、また別の色を出して混ぜ合わす。

 

時には画用紙に水を塗ってから

ポスカを塗って滲ませる技法も取り入れている。

一方で、

ペン先を集中させ細やかな線を描くこともあれば、

描いた直後の乾いていないインクを自分の指先で

わずかに伸ばしたり、乾いた筆に直接インクをつけて

傷やカサブタなどを表す。

 

一つの画材から、創作をする中で画材と対話をするかのようにして

元々のイメージを更に広げ、

繊細にそして豪快に、

様々な方法で描きたいものの「ゴール」へと向かっていく。

 

篤志さんとの関わりが始まった当初から

現在に至るまでの日々を重ねていく中で、

本人の好きなものは何か、最近観た映画の話が少しずつ始まり

徐々にそこに出てきた人物(悪魔や怪物などを含む)たちはどうなったのか、

ワンシーンの説明など、好きなことを

スタッフに語ってくださる時間が多くなった。

 

作風も当初は黒いペンのみの白黒の作品が続いていたが、

もともと好きだったポスカを片山工房でも使うようになり、

色がつき始めた。

 

さらに、

創作時に画用紙の下に敷いていた新聞紙についたインクから

派生して、大きなドクロが現れるなど、

絵が動き、

物語が広がり始めた。

 

 

 

作品は

「正義のヒーロー」よりも「悪」や「闇」のキャラクター

(特にアメコミ、マーベルやDC)や

「ドクロ」「ハロウィン」のモチーフが多いが

完全な悪というものはなく、

どこか明るく、ほのぼのとした雰囲気があり、

篤志さんは根本的に生き物が好きで

大切にしたいという思いが強いのだろうと感じる。

 

 

 

 

「夏のお友達連れてきたよ」と、セミの抜け殻を嬉しそうに持って来られたり、

片山工房内にいつの間にか入ってきた小さな虫を興味津々と観察される。

「かっこいい!」とリスペクトを込めて。

 

 

 

その眼差しで、

「こいつはなあ、

自分たちの星が破壊されたから怒ってそれで戦ってたら捕まったんや」

と、淡々と悪のキャラクターの立場を思いながら話して下さる。

そもそも悪のキャラクターたちは悪くなかったのか、と考えさせられるのである。

 

 

 

作品やものづくりの最後に必ずと言いていいほど

「できたっ!!」と!

 

生き生きといろんなことについて話が続いていく。。またこんなことを描いてみたいと話す。

 

篤志さんの目がきらきら輝く。

 

 

文責 久保遥